〈コンセプト・特色〉
老人介護の現場に演劇の知恵を、演劇の現場に老人介護の深みを
〈取り組みの概要〉
高齢者や介護者と共につくる演劇公演や、認知症ケアに演劇的手法を取り入れたワークショップを実施しています。代表作には、実在の商店街を舞台に行方不明になった高齢者を探す徘徊演劇『よみちにひはくれない』や、看板俳優・岡田忠雄(94歳)が認知症の妻を介護する日常生活を舞台化した『ポータブルトイレットシアター』などがあります。超高齢社会の課題を「演劇」というユニークな切り口でアプローチするその活動は、演劇、介護のジャンルを超え、近年多方面から注目を集めています。
〈運営主体について〉
「菅原 直樹」
1983年栃木県宇都宮生まれ。桜美林大学文学部総合文化学科卒。劇作家、演出家、俳優、介護福祉士。「老いと演劇」OiBokkeShi主宰。平田オリザが主宰する青年団に俳優として所属。小劇場を中心に、前田司郎、松井周、多田淳之介、柴幸男、神里雄大の作品などに出演する。2010年より特別養護老人ホームの介護職員として勤務。2012年、東日本大震災を機に岡山県に移住。認知症ケアに演劇的手法を活用した「老いと演劇のワークショップ」を全国各地で展開。現在、OiBokkeShi×三重県文化会館による「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクトが進行中。平成30年(第69回)度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞(芸術振興部門)を受賞。平成30年度(第20回)岡山芸術文化賞準グランプリ受賞。奈義町文化功労賞受賞。2019年度(第1回)福武教育文化賞受賞。
〈取り組みをスタートした時期〉
2014年1月
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
東京で俳優として活動していた菅原が、20代後半、「演劇だけじゃ飯が食えないので、何か別のスキルを身につけよう」とハローワークに行ったところ、ホームヘルパー2級の資格が取得できる講座のポスターが目に止まりました。実際に特別養護老人ホームで介護職員として働いてみると、そこに広がっている光景、そして、お年寄りとのコミュニケーションが、まるで演劇をしているように楽しかった。介護と演劇は、相性がいいのではないか、という実感がきっかけです。
〈運営コスト〉
運営資金は、チケット収入、助成金です。
劇団では小規模な実験的な公演を行い、公立劇場と連携してさらに規模を大きくした公演やワークショップを行っています。小規模な実験的な公演のため入場者数が少なくなってしまうので、公演の成果(写真、映像、テキスト)などをSNSやウェブサイトなどで発信しています。認知症ケアに演劇手法を活かした演劇ワークショップは、介護施設や教育機関、劇場などから依頼があって実施しています。演劇経験、介護経験のない人にも楽しく、わかりやすいプログラムを心がけています。
〈運営に必要な費用概算〉
25万円/月
〈運営資金の確保〉
自費、その他の公的補助、公益財団法人の助成金
■事業名:「老いと演劇」OiBokkeShi
■事業者名:菅原 直樹
■取材協力者名:菅原 直樹(「老いと演劇」OiBokkeShi主宰)