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参加型音楽プログラム

共に歌い、共に奏で、共に語らう音楽の場づくり

 

(株式会社リリムジカ、東京都新宿区)

· 地域性:大都市,運営(起点):介護,取り組み:交流拠点,資金:自己資金,日本 JAPAN

 

〈コンセプト・特色〉 

多くの人が持つ「マイソング(好きな曲・思い出の曲)」を通して、共に歌い、共に奏で、共に語らう音楽の場づくり   

〈取り組みの概要〉 

音楽の場づくりを行う専門家「ミュージックファシリテーター」が、介護事業所や自宅を定期的に訪問し、高齢者の方々が主体的に楽しめる場をつくります。内容は、歌唱、体操、楽器演奏、踊りなど様々な要素を組み合わせ、その時々で最適だと思うことをファシリテーターが臨機応変に判断して行います。 

グループの場合はほとんどのケースが1回45分の実施で、5~40名の方が参加されます。 

個人の場合はファシリテーターと1対1で、ご本人やご家族の希望する内容を20~40分で行います。これまで実績があるのは、特定のジャンルの曲の歌唱、ギター演奏のサポート、ピアノのレッスンなどです。頻度は多くて週1回、少ない場合は2~3カ月に1回です。 

毎回のプログラムを行ううえで一番大切にしているのは、音楽をすることそのものではなく、音楽という媒介を通してコミュニケーション(言語的・非言語的いずれも含む)が発生し、参加者それぞれが主体性をもった一人の人間として居心地良く居られる場をつくることです。 

積極的に歌うも良し、静かに聴くも良し、何をするかしないか誰にも強制されることなく、一人ひとりの意思と個性を尊重することを前提としています。 

このような場づくりを行う目的は2点です。 

1つは、介護を必要として生活される方々の日常に刺激や彩りをもたらすこと。そしてもう1つは、プログラムを通して浮かび上がる参加者のポジティブな一面を事業所の職員の方々やご家族と共有したり、ケアにあたっている皆さんが普段考えていることを聞かせていただいたりして、ケアの現場の一端を微力ながら一緒に担うことです。 

現在、事業所・個人の方を対象に156件の契約を結び、関東(東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木)、関西(大阪、兵庫)で活動しています。   

〈運営主体について〉 

「株式会社リリムジカ」 

株式会社リリムジカは、2008年に創業した会社です。代表を務める柴田は大学時代に音楽療法を専攻していました。当時、音楽療法士としての就職先が極めて少ないという状況を知ったことをきっかけに、共同経営者を得て大学卒業直後に設立しました。 

現在は、音楽の場づくりを行う専門家である「ミュージックファシリテーター」が34名所属しています。ファシリテーターは業務委託契約で、それぞれのライフスタイルやライフステージに合わせて様々な働き方をしています。 

もともと特定のオフィスへ出社するという仕組みがなく、ファシリテーターは担当の事業所に自宅から直行・直帰で仕事をします。打ち合わせや研修などは対面とオンラインを組み合わせており、新型コロナウイルスの感染が広がる前から完全リモート運営です。 

業務委託契約というと、会社は担当案件とファシリテーターをマッチングして終わりという印象を抱くかもしれませんが、実際は社内で日々活発なコミュニケーションが発生しています。現場への直行・直帰で、ともすれば孤独になりがちなファシリテーターの働き方をサポートする体制として、ファシリテーター同士で定期的に情報共有を行う機会や、学び・親睦の機会をつくっています。 

また、ファシリテーター以外の人員(運営メンバー)は非常勤・業務委託契約も含めて6名と小さな体制で運営しており、ファシリテーターの中には音楽プログラム実施の仕事だけでなく営業・広報など社内のあらゆる仕事に関わっている者もいます。 

組織運営における考え方として、代表を含め上下関係がなく、一人一人の自立性を重視した運営を目指しています。 

経営会議をはじめとした様々なミーティングには誰でも参加することができて、その記録は動画として社内に共有されます。また毎月の会計情報を社内の全員にオープンにしています。 

誰もが会社の経営に関して意見を出し議論ができる一方、コミット量が少ないメンバーにとっても居心地の良い組織でありたいと考えています。   

〈取り組みをスタートした時期〉 

2009年3月1日   

〈取り組みをスタートしたきっかけ〉 

2008年の創業当時は発達障害のお子さんを対象としたサービスを考えていました。しかし設立後1年近く経った頃、高齢者デイサービスでお仕事をいただく機会があり、その後少しずつ介護事業所とのつながりができて、今やその分野が当社の専門となりました。 

当初、介護事業所での仕事を考えていなかったのは、代表である私自身が高齢者とのコミュニケーションに苦手意識をもっていたからです。 

しかしあまりに仕事がない中でいただいたデイサービスのお話は大変ありがたく、背に腹は代えられないと考えお引き受けしたことが今につながっています。 

今思うと、苦手だと思っていたのはどう接して良いのかがわからなかったこと、特に認知症のある方が自分と地続きの人間であるという実感がなかったことが理由でした。当時うかがったデイサービスでお会いした認知症のある女性が、私の手を握ってニコニコと話される姿を見て、なぜか「ああ、この方は自分の延長線上にいらっしゃるのだな」と腑に落ちて、それ以来この仕事が12年続いています。   

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〈運営コスト〉 

会社をつくろうと決めたとき、営利組織として設立し、サービスとして相応のお金を払う価値のあるものを提供することこそがこの取り組みを続けられる最善の方法だと考えていました。創業前は「なんでNPOにしないの?」と言われたこともありますが、株式会社として設立してよかったと考えています。決して大規模なビジネスではありませんが、お客様からいただく対価でファシリテーターが報酬を得て、会社を存続させることができています。 

一方で、新型コロナウイルスが広がり始めてからはその影響を大きく受け、売上が激しく落ち込みました。それでも何かできることをと考え、休眠預金を活用した助成プログラムに応募したところ採択され、助成金を使った事業も行っています。 

ただ当社のような営利企業がこうしたプログラムに採択されることはまだ稀なケースです。応募先の資金分配団体の方からは「うちは非営利・営利関係なく公益性の高い事業をやってくれるところを採択するという考え方だが、非営利に限っているところも多い」と聞いています。 

したがって基本的には、会社が存続できる価格をサービス料として設定し、それに見合う内容をしっかり行うというかたちで取り組みを持続させています。 

当社の場合、単発でのプログラム実施も一部あるものの売上のほとんどが定期訪問を行う継続契約によるもので、コロナ等の影響がなければ比較的毎月安定した売上を立てることができます。 

また、社会性や地域性の高いビジネスを積極的に応援している信用金庫とつながりを持つことで、単に数字だけでなく当社の理念や方向性も含めて評価していただいたうえで融資を調達することができています。   

〈運営に必要な費用概算〉 

350万円/月   

〈運営資金の確保〉 

自費   

〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉 

新型コロナウイルスの影響を受けている今が、今までで一番苦しい状況です。先述したように、当社は音楽をコンテンツとして提供することではなく、音楽を媒介として人と人とのコミュニケーションが生まれることにサービス提供の目的を見出してきました。しかし2021年3月現在、コロナによって6~7割の事業所への訪問が中止となっています。 

今まではファシリテーターが現場に立つことで場づくりを行ってきましたが、今ではファシリテーターが直接その場にいなくても何か素敵な場が生まれることに貢献できないかという視点で考えています。 

その流れで2020年4月頃から行っているのが、DVDの制作とオンラインでのプログラム実施の2点です。 

DVDはカラオケ以上に歌いやすいものを目指し、ファシリテーターが現場で得た知見を詰め込んで、録音・撮影・編集など全ての工程を社内メンバーが担い制作しています。「毎日見ています」「一緒に歌いませんかとお声がけしなくても自然に皆さん歌われます」といった声をいただく一方、収支という観点からはもう少し売上を伸ばしたいと考えています。 

オンラインでのプログラム実施についても、直接訪問したときと同じくらいの盛り上がりを見せるケースもあれば、認知症のある方とのコミュニケーションに苦戦するケースもあります。また、そもそもオンラインの導入が難しいとお考えの事業所も多く、まだまだ課題が多い状況です。 

DVD、オンラインでのプログラム実施共に、コロナ収束後には直接訪問だけでない新たな選択肢として確立できるよう引き続き取り組んでいきたいと考えています。   

〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉 

常に職員のみなさまとの連携を強く意識しており、毎回のプログラム実施後に一緒に振り返りと情報共有を行っています。私たちとしては参加者の方々に関する情報をいただいて次回のプログラムに反映することを目的としていますが、職員の方々からも「振り返りとその記録があることで、ご本人のできることや逆に難しいことがわかって、ケアプランに活かすことができます。すごく助かっています」「利用者さんについて一緒に考えて一緒に悩んでくれるのがうれしいです」という声をいただきます。 

職員のみなさまは当然、ケアについて日々あれこれ考えていらっしゃるものの、それを言語化したり外部の誰かに話したりする機会がある方は限られているのではないでしょうか。私たちは限られた時間でお伺いする立場であり、ご利用者・ご入居者のことを一番よく知っているのは当然介護職の方々ですが、外部の者だからこそできる貢献として介護現場の一助となっているなら嬉しい限りです。 

また、上記でまだ収益的には課題が残ると書いたDVDですが、2020年5月の時点で短いサンプル版を契約先の全ての事業所に無料配布しました。「一番大変なときにプレゼントが届いてうれしかった」「これがあったのでコロナを乗り切れた」という声をいただき、いわゆる"コンテンツ化"に抵抗的だった考えを改めて制作に取り組んで良かったと感じています。   

〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉 

新型コロナウイルスによる影響は先述した通りなのですが、プログラム中止となっている事業所について、外部との接触が遮断され現場が大変な思いをされている中で、何かできることがないかをずっと考えています。 

何をするにせよ職員の方々の協力や機材・環境的なリソースが必要になりますし、こちらで何もできることがないという状況を大変悩ましく思っています。 

運営面に関しては、もともとフルリモート運営ではあったものの3カ月に1度は定期的に社内メンバーで集まって直接顔を合わせていました。それができなくなったにも関わらず、DVD制作などでメンバー同士の文字ベースでのコミュニケーションの機会は増えました。 

その結果、つながり感はなんとなくあるものの関係が深まらないような感覚を覚えたり、文字だけだと書き手の意図を正しく読み取れているか不安になったりといったことが起きました。 

オンラインで顔を合わせる機会を増やして対応していますが、このような有事のときだからこそ団結していきたいと思う気持ちに対し、現実は逆向きに働いていると感じています。   

〈持続させるための仕組みや工夫など〉 

当社のサービスはファシリテーターの質そのものが要です。基本的には1つの事業所に対し同じ担当者が継続して訪問しますが、様々な事情により担当が変更となるケースもあります。 

どのファシリテーターが担当になってもお客様の満足度を満たせるよう、ファシリテーターのサポートを充実させるよう努めています。たとえば外部での研修や勉強会に参加したり、仕事に役立つ書籍を購入したりしたときにはその一部を会社が負担する制度を用意しています。 

また社内研修では、お互いの知見をシェアしあったり外部講師を招いたりするだけでなく、一人ひとりが話すワークを行うなどして学びと親睦の両方を深めています。 

ファシリテーター同士の関係が良いと助け合いも生まれ、働きやすさ・仕事の継続のしやすさとサービスの質の高さの両方に良い影響が出てくると考えています。   

〈今後のビジョン〉 

これからますます介護現場の担い手が少なくなってくる中で、フルタイムの介護職の方々を増やすことは当然大切です。そのうえで、かつさまざまなグラデーションで介護業界につながりのある人が増えることも業界全体を支えていくと考えています。 

私たちは直接的に介護業務を行っているわけではありませんが、ケアの現場を微力ながら一緒に担いたいという気持ちでこの仕事を行っています。 

音楽に限らずさまざまな手段で介護現場と関わりを持つ周辺事業者や、音楽というキーワードをひとつのきっかけとして介護業界を知る人がもっともっと増えていくことが今の願いです。 

そこに貢献できるよう、実直に活動しながら自分たちの取り組みを発信していけたらと思います。 

■事業名:参加型音楽プログラム 

■事業者名:株式会社リリムジカ 

■取材協力者名:柴田 萌(株式会社リリムジカ代表取締役) 

■事業所住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-4-4 武蔵ビル5階 

■サイト:https://lirymusica.co.jp/ 

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