〈コンセプト・特色〉
75歳以上のおばあちゃんたちが、働くことで「生きがい」と「収入を得る」
〈運営主体について〉
「うきはの宝株式会社」
75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社です。おばあちゃんたちが「生きがい」と「収入」を得られることを目的に2019年10月に設立しました。主な事業内容は、おばあちゃんたちの得意と特性を活かした「食」と「料理」です。次世代にまで続く「ばあちゃんチーム」の仕組みで持続化可能な事業を目指します。
創業者であるわたし大熊充は、デザイナーです。故郷である福岡県うきは市の農村で、地域課題の解決に挑んでいます。地域のおばあちゃんたちを中心に若者たちも集め、多世代が協力して働く「多世代型協働」によって地域の課題解決をしていきます。20~70代の全員参加型ビジネスを目指します。
〈取り組みをスタートした時期〉
2019年10月1日
〈概要〉
おばあちゃんたち12名。年商1,800万円。働きに来て下さっているおばあちゃんたちから要望のあった、国民年金プラスの月2~3万円の収入を得られる仕組みです。おばあちゃんたちの「食」と「料理」で事業展開しています。おばあちゃんたちとお客さんが触れ合える飲食店「ばあちゃん食堂」の運営や、食品製造・卸、おばあちゃんたちがつくる、おむすび、惣菜を道の駅や販売店さんに卸売しています。
また、全国のお客さんにおばあちゃんたちの味を楽しんでもらえるよう、「ばあちゃんふりかけ」の商品開発中で、全国に流通させられるよう、自社通販を強化しています。
事業所の所在地でもある福岡県うきは市の農村で、農業もしています。素材である野菜の生産から始めています。おばあちゃんたちが「生きがい」と「収入」を得られる仕組みを作っています。
〈取り組みのきっかけ〉
「福岡県うきは市の75歳以上のおばあちゃんたちが、身体は動くが国民年金の受給だけでは生活もままならない状況になってきている」という問題を解決したいためです。働くことで生きがいと収入を得てほしいと考えました。
個人的には20代のころ、4年近く入院して孤独を感じていたときに、おばあちゃんたちに励まされて社会復帰することができたので、そのおばあちゃんたち本人ではないですが、次は僕がおばあちゃんたちを元気にしたい、笑顔にしたいと思ったからです。そして、僕は適度に「働く」ことでやりがいや生きがい、そして幸せを生むと信じています。おばあちゃんたちが元気で輝いていれば日本の未来も明るいと思います。経緯については、以下もご覧下さい。
〈運営コスト〉
自己資金。事業のスタート時点より自己資金によって自走しています。一つひとつの商品やサービスで、マネタイズを徹底することで事業の継続をすることができています。工夫としては、とにかく多くのお金を使わないこと、見栄をはらないこと。必要な物は稼いでから買うことです。本社も含め拠点の多くは遊休施設の活用(空家・廃園になった保育園の給食室の活用等)によってコストを抑え、事業の目的であるおばあちゃんたちの収入のほうへ向けています。
〈運営に必要な費用概算〉
130万円/月(※人件費・全経費含む)
〈運営資金の確保〉
自費
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
一過性では終わらない次世代まで続く「ばあちゃんチーム」とつくりました。
弊社では、
75歳以上のばあちゃんたちを「ばあちゃん」と呼び
75歳以下のばあちゃん、もしくはおばちゃんを「ばあちゃんジュニア」と呼びます。
そしてマネジメントに弊社の若いスタッフが付きます。
このチームが、ばあちゃんチームです。
年月が経つといずれ75歳以上のばあちゃんたちが引退するときが来ます。そうすると、ばあちゃんジュニアが、ばあちゃんに繰り上がり、リーダーとなり、同世代を率いてもらいます。そしてさらに年月が経つと、若いスタッフも、ばあちゃんジュニア→ばあちゃんと繰り上がって、リーダーとなり同世代のばあちゃんたちを集めチームを率いる仕組みです。
経営者であるわたしが死んでも続く仕組み、事業を創ります。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
事業をスタートした2019年10月から「ばあちゃん食堂」を含め、おばあちゃんたちの食や料理を通じて商品やサービスをつくってきました。ですが、数カ月後から全世界のコロナウイルス蔓延の影響で、福岡県も4月、5月と緊急事態宣言となり、ばあちゃん食堂も営業できなくなりました。また当初よりコロナウイルスが感染した場合の高齢者への影響は甚大だということで、会社自体を営業することができませんでした。2021年3月現在も、コロナウイルスの状況と向き合いながら、感染リスクを抑えた部門(食品製造卸・商品開発 https://www.makuake.com/project/ukihanotakara )で事業を伸ばし継続しています。 とはいえ当初の計画通りにはいきませんでした。何が起こるかわからないが覚悟を持って事業を続けていくこと、これに尽きます。変化し続けます。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
まずは何より働きに来てくださっているおばあちゃんたちが元気になったことです。働くことで前向きになってもらっています。職場で知り合ったばあちゃん同士が、仲よくなり友情も生まれています。ばあちゃんたちも言っていますが、年を取っても新たな出会いが、刺激になるそうです。そしてそんなおばあちゃんたちを応援したい、ばあちゃんたちの味を楽しみたいと、多くのお客さんたちに支持されるようになったことです。
福岡県うきは市という田舎の農村でありながら、事業規模も小さいながらも、全国の方にうきはの宝株式会社とばあちゃん食堂の取り組みを知っていただけたのがよかったと思います。おばあちゃんたちが働くことで輝き続けることが、ご家族や地域、社会にとってもよいということを、共感していただけるのがうれしいです。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
今、現時点で悩んでいることは、コロナウイルスの影響です。
おばあちゃんたちとお客さんとの接点づくりが重要です。飲食店「ばあちゃん食堂」が、ばあちゃんたちとお客さんとの強力な接点でした。感染のリスクを考えると逆にその接点が脅威となっています。やはり変化していかなければならないとは思いますが、変化に適応できるスピードが速いとは言えないことです。方針として大きなお金や資金を使わないことによって事業を継続させてきたので、大きな資金によっての変化はできません。変化していくのにアイデアと工夫で勝負していかなければと思っています。今後は新たな接点づくりを創出していかなければと、日々もがいています。
〈今後のビジョン〉
超高齢化地域、超高齢化社会が目の前に来ています。おばあちゃんたちが働くことで地域や社会に参加して輝ける仕組みを作ることが重要だと思います。故郷である福岡県うきは市で、ばあちゃんたちが働くことで生きがいと収入を得て輝き続ける仕組みをしっかりと作り、このモデルを全国各地の過疎地域に伝え広げていくことで、日本の中にあるうきは市と似た課題を持っている地域の課題解決の一つとなるようにしたいと考えています。全国各地にばあちゃんたちが活躍する場を作り「ばあちゃん同盟」を結びたいです。
そして、皆さんも思っているかもしれませんが、「じいちゃんたちは?」。そうなんです。じいちゃんたちが働ける場、活躍の場をつくっていきたいです。
じいちゃんばあちゃん、そして若者、多世代が協力して働く「多世代型協働」によって地域の課題解決をしていきます。20~70代の全員参加型ビジネスを目指します。
■事業名:75歳以上のおばあちゃんたちが働ける会社
■事業者名:うきはの宝株式会社
■取材協力者名:大熊 充(うきはの宝株式会社代表取締役)
■事業所住所:〒839-1402 福岡県うきは市浮羽町浮羽756